法律

少額訴訟

読み
ショウガクソショウ

少額訴訟とは

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求めるときに使える、簡易裁判所の特別な訴訟手続きのことです。原則として審理は1回だけで、その日のうちに判決が言い渡されるのが最大の特徴です。通常の裁判のように何か月も裁判所へ通う必要がなく、弁護士を立てずに本人だけでも進めやすいよう制度が設計されています。たとえば、業務委託で受けた在宅ワークの報酬5万円を「連絡が取れなくなった」と踏み倒されてしまったとき、あるいは友人に貸した10万円が約束の期日を過ぎても返ってこないときなどに活用できます。訴える金額が60万円以下であることが条件で、同じ人が同じ簡易裁判所で利用できるのは年に10回までと決められています。少額だからと泣き寝入りせずに済む、私たちにとって身近な権利回復の手段といえます。

少額訴訟のメリットと向いているケース

少額訴訟には、忙しい人でも使いやすい利点がいくつもあります。①1回の期日で審理が終わり、原則その日に判決が出るためスピードが速い。②かかる費用は、請求額に応じた収入印紙代(数千円程度)と郵便切手代が中心で、比較的安く済む。③手続きが定型化されており、裁判所の窓口で書式や書き方を案内してもらえる。④勝訴すれば、給料や預金の差押え(強制執行)へつなげられる。向いているのは、金額が明確で証拠がそろっているケースです。契約書・請求書・振込履歴・やり取りのメッセージなど、「いつ・いくらを・誰に」がはっきりわかる資料があるほど有利になります。逆に、相手が金額そのものを激しく争っていて事実関係が複雑な場合は、通常訴訟のほうが適することもあります。

手続きの流れと注意点

少額訴訟の大まかな流れは次の通りです。①相手方の住所地などを管轄する簡易裁判所に、訴状と証拠を提出する。②裁判所から相手へ書類が送られ、審理の期日が指定される。③期日に双方が出席し、その場で話を聞いたうえで判決(または和解)となる。ここで注意したいのは、相手が「通常訴訟に移したい」と申し出た場合、少額訴訟ではなく通常の裁判へ移行してしまう点です。また、判決に不服でも控訴はできず、異議申立てという別の手続きになります。そして忘れてはいけないのが、勝訴=自動的にお金が戻る、ではないということです。相手が支払わなければ、あらためて強制執行の手続きが必要になります。書き方や利用できるかどうかに迷ったら、簡易裁判所の窓口や法テラスに早めに相談しましょう。個別の事情によって最適な進め方は変わるため、金額が大きい・相手が争う姿勢を見せているといった場合は、弁護士など専門家に相談したうえで判断することをおすすめします。

代理店時代、報酬をめぐるトラブルの相談を受けるたびに、「裁判なんて自分には無理」と最初からあきらめてしまう女性の多さが気になっていました。でも少額訴訟は、まさにそんな人のためにある制度です。難しい法律用語を並べる必要はなく、まずは証拠を集めて簡易裁判所の窓口を訪ねるだけで道が開けることも少なくありません。泣き寝入りする前に、「こういう手段があるんだ」と知っているかどうかで結果は大きく変わります。あなたが働いた分は、あなたが受け取るべきお金です。

— Belle Work 編集長 / 橘 美咲